日本発グローバル企業の経営者ブログ

本ブログの内容は個人的見解であり、関係する諸団体とは無関係です。

海外出張術:究極の取捨選択

10月にヨーロッパ、米国をそれぞれ東西南北を廻る出張をしてきました。これはまだマシな方で、以前は米国と中南米を廻り、帰国の途中にヒースロー空港で買収交渉をやるというハードな出張もやってきました。

ハードな出張を支えてくれるは旅のお供であるが、それ自体に重さと容積があることを忘れてはいけない。役に立たないものを持っていくと、帰国までおもりを持つのと同じことになる。本当に必要か、重さ・容積に値するか、取捨選択を重ねてきた。今回は長年のノウハウをまとめたので、参考なるものは役立ててほしい。

 

●キャリーケース:車輪

荷物はすべて機内持ち込みなので、キャリーケースは重要である。機内持ち込にはサイズ制限があるので、制限内で最大の容積が欲しい。容積には外側の容積と、内側の容積があるので注意しよう。

容積だけ見ていても失敗したことがある。車輪の直径が小さいとその分、内容積が大きくなる。ところが、車輪の小さなキャリーケースは最近の空港に合わない。最近の国際空港は、巨大化し長距離を歩かされる。歩く歩道を通り、カーペットの上を動くことが多い。歩く歩道で、小さな車輪はひっかり易く危険だ。また、カーペット上では小さな車輪のキャリーケースは回転抵抗が大きく、力を入れないと押せない。車輪の直径は5cm以上にしよう。

また、二輪ではなく、四輪がマストである。海外出張ではブリーフケースを上に乗せる。四輪のキャリーケースにブリーフケースを固定し直立させると、軽く押すだけで歩ける。二輪は重量が集中するのでカーペット上では抵抗が大きい。さらに移動時には二輪は斜めにするので、荷物の重みがのしかかる。また、混雑する空港では、二輪のキャリーケースは他の乗客に迷惑をかけることもある。だから、5cm以上の四輪である。

キャリーケースのハンドルは、丈夫で安定したものが良い。そうすると内部にでっぱりができて、スペース的に非効率ではある。でっぱりの間の溝状の空間には、洗面道具や常備薬などを収めるとうまく整理できる。更に言うと、溝の幅に合わせたケースを用意するとよい。

●キャリーケース:軽量ソフト

ハードなケースは使わない。なぜなら、ソフトケースならいっぱいになって更にお土産を入れたくなっても、押し込んでしまえばソフトな蓋の部分が膨らんで吸収してくれるからだ。

ハードケースは重い。私は鞄は荷物の入れ物として評価するので、それ自体が重い鞄は使う気がしない。自重、容積比にはシビアになろう。

●AC電源

出張先では毎晩充電が必要だ。まず、コンセントである。今は組み立て式のユニバーサルアダプターが多く売られているので、それを使えばよい。重さ、容積も見る。私は無印のものを使っているが、コンパクトで便利、問題もない。

落とし穴は、ホテルのコンセントである。古いホテルはコンセントがユルユルなことが多い。アダプターが入ってもユルいと、AC電源の重さで外れてしまう。それをカバーするのは100円ショップでも売っている延長コードだ。コンセントにアダプター、更に延長コードを付け、そこにAC電源をつけることで解決である。

私はiPhoneiPadで出張することにしているが、AC電源は一つで両方充電できるものを使っている。ところが、新しい機種になったとき急に充電できなくなった。バッテリー容量が増加し、その分必要なアンペア数が増えたことが分かった。アンペア数の大きなものに買い替えて解決した。機種変更時には、アンペア数も要チェック。

●腕時計、目覚し時計

普段は電波調整の腕時計を使っているが、海外出張に限っては普通の時計にしている。飛行機に乗ると同時に、目的地の時間に合わせるので、手動に限る。また、出張先で電池切れにならないよう、光充電のものを使っている。

目覚し時計が持っていく。時差で寝坊しやすいからだ。ホテルの目覚しは操作に慣れていないので、使うにしてもバックアップにする。携帯のアラームもあるが、ベッドサイドで充電できるとは限らないので使わない。

目覚し時計は、シンプルでランプ付のものが良い。時差ボケで目覚めたとき、時間を確認するのにランプはありがたい。今使っている目覚しは電池込みで70gなので、許容範囲である。

●携帯ウォシュレット

日本で快適で清潔な生活に慣れると、海外でもウォシュレットが欲しい。アマゾンでも売っているので密かに買っておこう。ただし、電動はやめよう。電池が切れるとおもりになる。ちなみに、

携帯ウォシュレットはキャリーケースの中のハンドルの間の空間にぴったり入るので邪魔にならない。

携帯ウォシュレットはあれば便利なモノと考えていたが、優先順位を上げることにした。ある国で水洗だがトイレットペーパーは流せず、横の容器に入れる!という経験をしたからだ。ということで、必携アイテムに格上げした。

●ワイシャツ、ネクタイのバックアップ

ワイシャツは、出張日数からホテルでのクリーニング分を差し引いた最低限プラス1を持っていくことにしている。食べ物等で汚しと時のバックアップである。ネクタイも2本持つことにしている。

●割愛することにしたアイテム達

PCは重いのでやめた。iPhoneiPadでほとんど何とかなる。

電動髭剃りも重いのでやめた。その代り、切れの味の良い使い捨てをいくつか持ち、捨てながら移動する。

昔は本を何冊か持参したがやめた。最近はiPadキンドルだけにしている。機内の映画は見つくしたので、iPadに映画にダウンロードしていくことにしている。

パジャマ、ルームウェアは、ホテル室内が冷えるアジア、中東以外は止めた。ホテルのエアコンを調整し、寝るとき以外はバスローブを着たりしている。

 

 

 

 

新宅塾『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』

伊藤光一朗、光文社新書


経営の現場では常に原因の解明と対策の実施に追われる。例えば、ある事業が急激に業績不振に陥って対策に迫られたとしよう。長年の懸案ならば原因は分かっているかもしれないが、急激な悪化の場合は短期期間でそれなりの分析が必要だ。
それは意外と難しい。そこには、経営者の主観も入るし、組織風土から来るバイアスもあるだろう。しかし、限られた時間で判断を下さなければならないのが現実だ。
原因と結果の関係を解き明かすのは理論的にも難しい事が理解されておらず、安直な推論が世に溢れている。数ヶ月前、ビッグデータとAIを使って日本社会の将来を予測した番組があった。『40代単身世帯』が増えるほど社会問題が深刻化するという内容が注目を浴びたが、因果関係についての説明は貧弱だった。それは因果関係の立証の難しさを考えれば当然で、ビッグデータ、AIを使ったからといって因果関係が説明できるわけではないのだ。
本書は、因果関係推定の基礎に立ち返って分かりやすく説明しており、ビッグデータ、AIの正しい使に向けた良い指針となっている。
因果関係を立証する方法は、大きく分けてランダマイズに条件を変えて結果を見る社会的実験と、特殊な制度に対する人々の反応を分析する自然実験しか無い。
詳細は本書に譲るが、因果推論によって以下のような興味深い現象が観察れれている。
-オバマ大統領は2012年の選挙で、ランダマイズド試験を実施して最適なWebデザインを採用し、選挙資金の増加に成功した。
-Uberの価格変動制のもとで顧客の反応を分析する事で、ある状況下での需要曲線を実際に描く事ができた。
-重量別の燃費規制のもとで、メーカーと購入者は燃費規制の緩い重い自動車を選択し、自動車に関する社会的費用はかえって増加した。
以上の例からも分かるように、正しい推定方法でビッグデータ、AIを活用すると、政治、行政、ビジネスの世界で多くの有益な知見が得らる。
今だからこそ、目を通しておきたい、お勧めの一冊だ。

海外出張術: サバイバル食事

海外出張で体調を壊して仕事に差し障りが出たり、予定を変えなければことは避けたい。特に、地位の高い人ほど仲間に迷惑をかける事になる。また、帰国後もハードスケジュールが待っている。従って、体調管理には慎重になり、多少のわがままを言うのは許してもらうしかない。

 

今日は食事については考えてみよう。私は胃腸は丈夫な方で、消化不良の経験はあるが食中毒の経験はない。それでも海外での食事には慎重である。人はそれぞれ体質が異なるので、自分が苦手なもの、体調を壊しやすいものを把握しておくことは重要だ。

 

まず、先進国、欧米諸国での食事を考えてみよう。ロングフライトで時差ボケもあるので、本来食事をしない時間に食事をしていることを意識しよう。胃も腸も予想していない時に食べ物が詰め込まれるのである。だけら、できる限り消化の良いものを少な目にとるの良いとと思う。

 

悩むのは米国で夜遅くホテルに到着して、空腹を満たしたい場合である。パスタの選択が無いことは言うまでも無いだろう。ステーキも重い。多めに食べたい場合はハンバーガーだろう。ハンバーガーが不味いと米国人からもクレームが殺到すると考えるからである。実際、これまでの経験で田舎のホテルでもハンバーガーはルームサービスでも大きな失敗は無かった。ただし、大量のフレンチフライは半分以下にした方が良い。カロリーの問題もあるが、脂質の良し悪しをチェックできないからである。

 

ハンバーガーはちょっと重いという場合は単品のサラダという選択がある。米国の場合サラダ単品と言っても、想像を超えるボリュームで出てくる。メニューをよく見ると、チキンまたはサーモンのトッピングもわずかな追加料金で選択出来るので、調整が効く。

 

難しいのは新興国であ。最大の敵は水である。飲料水、歯磨き等はすべてミネラルウォーターになるので、まずはその確保から始める。さらに生水を使っている可能性のある氷、生野菜、サラダもすねて避ける。また店によるが、質の悪い油が大量に使われている可能性のある中国、インドも注意が必要である。油断してはいけないのは、新興国の空港ラウンジである。水、食品の衛生管理が緩いので注意しよう。

 

近年、新興国でも日本料理店が増えた。ただし、日本人の経営で日本人の料理人がいるのは極めて稀と考えた方が良い。現地社員と食事に行くと、怪しい日本料理店に連れて行かれて、店員から刺身など 生ものを勧められる事がある。そういう時は、嫌な顔をしてはいけないが、たかが食べ物でリスクを犯す価値は無い。私は生ものをには断固として手をつけず、一人生姜焼きを注文して来た。なぜ生姜焼きかというと、調理法が簡単で大きなハズレが無い事、また生姜自体に殺菌、解毒作用があるからである。生姜焼きには随分助けられたので、感謝、感謝である。

 

論説:働き方改革の方程式

『働き方改革』が叫ばれてる。日本にとって非常に重要なテーマだ。並行して長時間労働の問題も報道もされているので、働き方改革=労働時間、残業短縮と勘違いしている人も少なくないと思う。

 

基本に立ち帰って考えてみよう。どんな改革も関連性と制約があり、その中での改革を考えないと、思わぬ結果をもたらす。働き方改革の制約条件、言い換えれば方程式はこうだ。

         労働時間×生産性=成果

この制約下で考えると、生産性一定だと労働時間を減らすと成果物も減少することになる。それは、いずれ所得の減少、生活水準の低下に繋がる。これは殆どの人が望んでいない事だろう。

 

逆に、単純に労働時間を増やすこは成果物の増加に繋がるだろうか?そこには『収穫逓減の罠』が 待っている。収穫逓減の罠は『収穫逓減の法則』に基づいている。同じ土地で同じ作物を栽培する限り、多くの種を蒔き、農作業を増やしても、やがて収穫は増えなくなるということだ。低い生産性を放置してひたすら長時間労働をすると、収穫逓減の罠にはまるだけだ。

 

ではどうしたら良いのか?それは生産性の改善に尽きる。単純すぎると思う人もいると思うが、基本を外した改革は絶対に長続きしない。だから、働き方改革は、ストレートに『生産性改革』と言い換えた方が良い。

 

ご存知かもしれないが、日本の労働生産は先進国では最低水準だ。今の低生産性が続けば生活水準の維持すら難しくなる。生産人口の急激な減少がすでに始まっており、さらに生産人口のかなりの部分を医療介護に振り向ければならないからだ。如何に高品質な製品、サービスを誇っても、働く人は幸せにならない。

 

生産性改革実現のためには、如何にして『収穫低減の罠』から抜け出すかを考えれば良い。方法は二つしかない。肥沃な土地に移るか、作物を変えるかだ。土地の肥沃度を上げるということは、付加価値の高い事業分野に移ることを意味する。これは働く人の問題ではなく、企業、最終的には経営者の課題と言える。

 

作物を変える対策は、企業全体の課題と言える。日本企業は手がかかる割に収穫物の少ない野生種のようで、品種改良が必要だ。現実を直視しよう。実務経験のみで昇進した素人上司は、保身のため多くの無駄な宿題を部下にやらせる。プロとしての教育を受けてない部下は、試行錯誤に時間を浪費して疲弊する。プロを育成する体系的教育は、愛社精神、中身のない理念の刷り込みとは別物である。かくして長時間労働、低生産性社会が延々と続くのである。

 

さてここで、結論をまとめよう。働き方改革は生産性改革であり、経営者のなすべき事は高付加価値事業への大胆なシフト、働く人はその道のプロになる、に尽きる。それぞれについての議論は、 また別の機会に取り上げたい。

経営の眼: 収益改善の短期と長期

企業経営では日常的に、経営改善という課題と取り組む。収益状況の深刻さやそれに対応するための改善策の実現可能性を勘案して、経営者は次の手を打たなければならない。今回は収益改善策の効果を評価する上で、注意すべき点について説明したい。


・短期的効果は過大評価し易い
今期の収益目標の達成が難しく、追加的収益改善が必要になったとしよう。こうした事は、ほとんどすべての企業で毎年繰り返されている。
各事業、各機能から上がってくる来る収益改善策を集計して、着地点を探ることになる。上場会社であれば、収益見通しの修正をするかどうかの判断をしなければならない。
こうした局面で重要なのは、玉石混交の案をどう評価するかだ。改善策の実現可能性には比較的注意が向くが、見過ごされることが多いのは、何時から効果が出て、今期中にどれだけの効果が期待出来るかだ。そこを見誤ると、追加策への取組みが遅れたり、下方修正のタイミングが遅れて市場にサプライズを与えることになる。
ここで提案側の心理から考えてみよう。多分、割り当てられた収益改善を改善を並べるので精一杯である。とくに不振部門ではそうだろう。実施して実際の改善効果が現れるまでの時間を評価している余裕もないだろう。
そうした提案を受けた経営者どうしたら良いか。本来は一つ一つを吟味して、正味の効果を見定めるべきだが、現実にはその時間がない。そうした場合は、提案効果を半分で評価するのが一つの方法だ。
乱暴に半分にしてるいるのではなく、理論的根拠がある。期末に向けて徐々に効果が現れることをイメージしよう。改善効果は時間かける効果の掛け算で、期末に向けた垂直三角形と考えれば良い。垂直三角形の面積は、底辺(時間)かける高さ(効果)÷2なので、半分と見るのはりは一次近似としては悪くない見積もりと言える。


・長期的効果は過小評価され易い
こうして多くの改善提案は、額面通りの収益貢献を残すことが出来ず失望感を残すわけであるが、長期で見ると評価が一変することを忘れてはならない。
長期で変化することは二つある。第一に長期では効果の面積が垂直三角形から長方形に変わり、時間かける効果がそのまま効くということである。第二に改善策の効果が時間とともに拡大することが期待出来る場合である。効果は累積的となり、絵に描いたような『継続は力なり』のケースになる。
日本企業では一銭一円の原価削減の積み上げが重視され、それが競争力を形成してきたことは事実である。多くの社員は、言われるまま、 半ば盲目的に原価改善に取り組んでいる。しかし、何故原価改善の継続が重要かを理論的に理解すれば、やりがいも一段と増すだろう。


重要なのは長期的に、累積的効果をもたらす収益改善である。

お役立ち:トップの海外出張術

管理職になったことから海外出張が激増し、一時は一年の半分近くを海外で過ごした。社長になってからは、滞在期間よりも出張回数が増えた。その中で、身に着けた海外出張の工夫について紹介したい。

特にリスク管理には敏感になってほしい。ヨーロッパ同時多発テロの起こった週末、私はブラッセル出張を予定していた。コンゴ紛争に端を発するベルギーの武器闇市場の記憶がかすかに蘇り、リスクが高いと思った。会議の予定は変えられないので、リスクを少しでも下げることにした。週末だが、フライト、ホテルをすべて見直して変更してもらった。こういう場合は『決めた。週末で悪いがやってくれ。』と言う迷いも、妥協もない一言が重要である。それが結果的に部下を動きやすくする。

・フライトの選択は自分で行う

出張経験が一番豊富で、出張目的を理解しているのは自分である。自分でフライトを選び、それを秘書に渡して手配を任せるのが最適な分業だ。

最近は、日系航空会社のフライト・スケジューラーも改善されて、使いモノになるようになった。往復は日系を使うことが多いので、それを使うのが一番早い。

・直行便を使う

トランジットのリスクは大きい。米国での入国審査、雷雨、霧のような気象条件、機材の不具合など何か一つでも、トランジットはうまくいかなくなる。一つのトランジットミスで、多くの人に迷惑をかけてはいけない。海外での国内移動も、移動も極力直行便を使うべきである。

・時差ボケ防止には出張分割

三か所以上の出張は、直行便の単純往復に分割することを考える。一週間以上滞在すると時差ボケから回復に時間がかかる。短期間の往復なら、回復も早い。

・荷物は持ち込みだけ

預けた荷物がちゃんと出てくる保証はない。観光はともかく、ビジネスでこのリスクをとる価値はない。機内持ち込みサイズを確認して、荷物はコンパクトにまとめる。短距離専門の小型機では搭乗口で預けることになるが、間違えられないように目印をつけておこう。荷物をまとめるコツは、また別の機会にまとめたい。

・機内ではリラックス

視力の衰え、つまり老眼になってからは、機内での読書はあきらめた。また、低気圧・低酸素、極度の乾燥と騒音に囲まれた機内では、思考力も鈍る。あれこれ考えてもよいアイデアは出ない。フライト時間は休養と考え、リラックスするように心がける。楽な服装に着替える、耳栓・ノイズキャンセリンングイヤホンを使う、自分にフィットするアイマスクを持参するなど工夫する。

・温度と体調管理

日系と欧米、アジア系航空会社では、機内の温度設定が大きく異なる。欧米系はとにかく寒い。乗ってみないと分からないので、ウィンドブレーカーなど重ね着できるものを持参した方がよい。ホテルも同様だ。部屋に入ったら、ます温度コントローラーをチェックすること。

・シートの機能をチェック

ロングフライトでは、フルフラットは必須である。最新版のシートに一気に全部が変わるわけではないので、航空会社サイトで自分が乗るフライトのシートチェックが必要である。
BAに続き、ANAが導入したスタガードは、プライベート感、出入りのし易さなどが素晴らしく、実に革新的だった。現在は、JALJAL Suiteで一歩リードしている。ANAの巻き返しを期待したい。

・座席の位置

シートマップを見てシート配列は確認しておく。私は短距離は窓側、長距離は通路側を基本にしている。2-2-2の配列であれば、隣人の出入りを気にしなくて良い、真ん中の島のシートを選択する。ただし、米国国内線では超ヘビー級の乗客、スタッフが行き来する度にフロアのパネルが大きく沈み、通路側席は上下に揺れる。米国では窓側も選択肢だ。

また、最前列は避けた方がよい。最前列はブリーフケースを置く場所がなく、離着陸時にはキャビンに入れなければならない。ワインの品定め、お代わりをしやすい、2-3番目がよいだろう。

・遠慮なく呼び出しボタンを使う

私も最初は遠慮から抵抗感があったが、割り切って使うことにした。声をかけるタイミング待つよりは、即押した方が精神衛生にも良い。ただし、頼み方は丁寧に、笑顔でお礼も忘れずに。仕事も出張も、コミュニケーションは重要だ。

・空港ホテルを上手く使う

空港へのアクセス回数が増えるのは、時間、交通渋滞のリスク等で無駄が多い。毎日の荷造りもこたえる。例えばヒースローには空港内にホテルがあり、そこを拠点にヨーロッパ各国を日帰りことが可能である。そうすると、ホテルは連泊で荷物は置きっぱなしですむ。疲労度は、びっくりするほど軽減される。

・リスク感度を100倍に

危険度をゼロにすることは出来ないが、少しでもリスクを減らすことを考える。
例えば、ヨーロッパではユーロスターTGV以外の鉄道には乗らない。危険地帯にある駅舎、改札のないヨーロッパの鉄道は治安が悪く、窃盗団が闊歩していると思った方がよい。言うまでもなく、テロリストのソフトターゲットでもある。
また、誘拐ビジネスが盛んな中南米、アジア、中東、アフリカの一部も気を付けた方がよい。リモの手配も、普段と違う会社を使う、本当に依頼したドライバーが来たか確認手順を準備することは有用だ。会社での地位=身代金なので、間違っても社長が来るとは言ってはいけない。事件の背後には必ず、内部情報の洩れがある。

最後になったが、外務省の海外渡航者登録『たびレジ』は面倒がらずにやろう。

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論説:減損テストに内在するリスク

近年、日本企業による買収が大きな減損を発生させている。マスコミの報道では、買収時の楽観的見通し、高値つかみ、デユーデリの甘さ、買収後統合(PMI)の失敗などがその原因とされ、日本企業による買収の稚拙さが指摘されている。

確かに、買収時の検討の甘さからくる企業・事業価値の過大評価や、見過ごした偶発債務などによるものは、買収側のレベルアップが必要とされる問題だろう。

実は、状況はさらに複雑化している。多くの企業、特に海外での事業拡大や買収を盛んに行う企業が、国際会計基準(IFRS)を採用するようになって、新たな減損リスクにさらされるようになった。

国際会計基準では、買収評価とは異なるディスカウントレートを使用して、買収価値の再評価をする。買収評価を行う際、企業は自社の加重平均資本コスト(WACC)から出発し、一定のリスクファクターを上乗せしてディスカウントレートを設定する。買収対象の将来キャッシュフローをこのディカウントレートで割り引いて現在価値を求める。これが買収価値評価の基準となる。もちろん、他にも類似取引のEBITDA倍率などをも参考にしながら、買収交渉が行われる。

IFRSを採用すると、買収後IFRS基準の減損テストが毎年行われることになる。問題は、減損テストに使われるディスカウントレートが、買収評価のディスカウントレートと異なることだ。IFRSの減損テストでは、買収対象の地域構成から通貨別ディスカウントレートを設定し、現在価値を計算し、それを基準に減損評価を行う。

日本企業が買収評価を行う際、資金調達も考慮して円ベースの資本コストから出発することがほとんどだ。それが減損テストになって、多通貨評価になると何が起こるだろうか。日本の金利が世界最低水準にあること、株式に関する期待収益率も低いことを考えると、減損テストのベースになるディスカウントレートは、買収評価の資本コストよりも高くなると考えられるそれは、現在価値を減少させ、減損発生のリスクを上げることになる。

多くの場合、買収側の企業は資本コストそのものを使うことは少なく、リスクファクターの上乗せをするので、それで吸収できる間は大きな問題にならない。しかし、リスクファクターをぎりぎりまで圧縮して買収評価をした場合、内外資本コスト差が広がった場合は、大きな問題となり得る。

このようなリスクが現実のものとなる可能性は決して小さくはない。買収評価の際、事業評価、買収後の戦略策定をしっかり行うことが最重要であることに変わりはないが、こうしたテクニカルなリスクにも目を配る必要が出てきた。

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