日本発グローバル企業の経営者ブログ

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新宅塾『数字は武器になる』野口悠紀雄、新潮社

野口先生は私の偉大な恩師の一人です。大学で『情報の経済理論』という科目があって、情報の価値とは何か、非常にシンプルな期待値計算のモデルで説明してくれました。先生は工学部出身なのに公務員試験経済職を受けて最優秀で大蔵省に入り、後に学者に転ずるというユニークな経歴の持ち主です。
一方で、先生は学問とは程遠い実践的、日常的な事柄についても、その明晰な頭脳を惜しみなく使って、秘訣を伝授してくれます。凡人にはこの上もなくありがたいことです。そう、ベストセラーになった『超整理法』とそれに続く超〇〇シリーズです。
さて、この本ですが、世の中を理解する上で、数字とどのように付き合うべきかをまとめたものです。まず、理科系の数字と文化系に数字の違い、有効数字の重要性が述べられていますが、心に響いたのは、何と言っても『桁を間違えるな!』です。
ビジネスパーソン、経営者は毎日多くの数字に遭遇し、何かの意思決定をする必要があります。その数字が実は桁を間違えていたとしたら大変なことになります。実体験からしても、それは非常によくあることなのです。だから、桁には細心の注意を払います。
桁のを正しく認識するのはは、事実認識の第一歩です。しかし、それが難しいのです。野口先生が例示しているのは、第二次大戦の犠牲者数で、ソ連、ドイツの東部戦線の犠牲者が西部戦線に比べて一桁大きいのです。全人類的にみると、第二次世界大戦は主にドイツとソ連の戦いだったと言えなくもないのです。
桁に関する感性を磨くには、まずは数字の背景をミクロ的、局所的に深く理解することが必要です。しかし、それだけでは大変な見過ごしをする可能性があります。そこで、逆にマクロ的、大局的な面から数字を検算が出来れば大変有益です。それが『フェルミ推定』と呼ばれるものです。フェルミ推定について書かれた本はいろいろありますが、本書がベストだと思います。
先生は博学で尋常ではない好奇心の持ち主でです。この本でもページの隅に囲み記事があります赤穂浪士が事を成し遂げたあと、泉岳寺に引き揚げる距離とその移動に要した時間をから平均速度を計算して、彼らが恐るべき強靭な体力の持ち主だったことを推定しています。潜伏生活の中で、どのように鍛えたのでしょう。或いは、当時の人々にとってはごく普通のことで、現代人が弱っているだけなのか、とにかく想像力が掻き立てられる話です。歴史もこうした観点から検証すると、新たなことがもっと明らかになるかもしれませんね。
 
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