日本発グローバル企業の経営者ブログ

本ブログの内容は個人的見解であり、関係する諸団体とは無関係です。

論説:働き方改革の方程式

『働き方改革』が叫ばれてる。日本にとって非常に重要なテーマだ。並行して長時間労働の問題も報道もされているので、働き方改革=労働時間、残業短縮と勘違いしている人も少なくないと思う。

 

基本に立ち帰って考えてみよう。どんな改革も関連性と制約があり、その中での改革を考えないと、思わぬ結果をもたらす。働き方改革の制約条件、言い換えれば方程式はこうだ。

         労働時間×生産性=成果

この制約下で考えると、生産性一定だと労働時間を減らすと成果物も減少することになる。それは、いずれ所得の減少、生活水準の低下に繋がる。これは殆どの人が望んでいない事だろう。

 

逆に、単純に労働時間を増やすこは成果物の増加に繋がるだろうか?そこには『収穫逓減の罠』が 待っている。収穫逓減の罠は『収穫逓減の法則』に基づいている。同じ土地で同じ作物を栽培する限り、多くの種を蒔き、農作業を増やしても、やがて収穫は増えなくなるということだ。低い生産性を放置してひたすら長時間労働をすると、収穫逓減の罠にはまるだけだ。

 

ではどうしたら良いのか?それは生産性の改善に尽きる。単純すぎると思う人もいると思うが、基本を外した改革は絶対に長続きしない。だから、働き方改革は、ストレートに『生産性改革』と言い換えた方が良い。

 

ご存知かもしれないが、日本の労働生産は先進国では最低水準だ。今の低生産性が続けば生活水準の維持すら難しくなる。生産人口の急激な減少がすでに始まっており、さらに生産人口のかなりの部分を医療介護に振り向ければならないからだ。如何に高品質な製品、サービスを誇っても、働く人は幸せにならない。

 

生産性改革実現のためには、如何にして『収穫低減の罠』から抜け出すかを考えれば良い。方法は二つしかない。肥沃な土地に移るか、作物を変えるかだ。土地の肥沃度を上げるということは、付加価値の高い事業分野に移ることを意味する。これは働く人の問題ではなく、企業、最終的には経営者の課題と言える。

 

作物を変える対策は、企業全体の課題と言える。日本企業は手がかかる割に収穫物の少ない野生種のようで、品種改良が必要だ。現実を直視しよう。実務経験のみで昇進した素人上司は、保身のため多くの無駄な宿題を部下にやらせる。プロとしての教育を受けてない部下は、試行錯誤に時間を浪費して疲弊する。プロを育成する体系的教育は、愛社精神、中身のない理念の刷り込みとは別物である。かくして長時間労働、低生産性社会が延々と続くのである。

 

さてここで、結論をまとめよう。働き方改革は生産性改革であり、経営者のなすべき事は高付加価値事業への大胆なシフト、働く人はその道のプロになる、に尽きる。それぞれについての議論は、 また別の機会に取り上げたい。