日本発グローバル企業の経営者ブログ

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経営の眼: 収益改善の短期と長期

企業経営では日常的に、経営改善という課題と取り組む。収益状況の深刻さやそれに対応するための改善策の実現可能性を勘案して、経営者は次の手を打たなければならない。今回は収益改善策の効果を評価する上で、注意すべき点について説明したい。


・短期的効果は過大評価し易い
今期の収益目標の達成が難しく、追加的収益改善が必要になったとしよう。こうした事は、ほとんどすべての企業で毎年繰り返されている。
各事業、各機能から上がってくる来る収益改善策を集計して、着地点を探ることになる。上場会社であれば、収益見通しの修正をするかどうかの判断をしなければならない。
こうした局面で重要なのは、玉石混交の案をどう評価するかだ。改善策の実現可能性には比較的注意が向くが、見過ごされることが多いのは、何時から効果が出て、今期中にどれだけの効果が期待出来るかだ。そこを見誤ると、追加策への取組みが遅れたり、下方修正のタイミングが遅れて市場にサプライズを与えることになる。
ここで提案側の心理から考えてみよう。多分、割り当てられた収益改善を改善を並べるので精一杯である。とくに不振部門ではそうだろう。実施して実際の改善効果が現れるまでの時間を評価している余裕もないだろう。
そうした提案を受けた経営者どうしたら良いか。本来は一つ一つを吟味して、正味の効果を見定めるべきだが、現実にはその時間がない。そうした場合は、提案効果を半分で評価するのが一つの方法だ。
乱暴に半分にしてるいるのではなく、理論的根拠がある。期末に向けて徐々に効果が現れることをイメージしよう。改善効果は時間かける効果の掛け算で、期末に向けた垂直三角形と考えれば良い。垂直三角形の面積は、底辺(時間)かける高さ(効果)÷2なので、半分と見るのはりは一次近似としては悪くない見積もりと言える。


・長期的効果は過小評価され易い
こうして多くの改善提案は、額面通りの収益貢献を残すことが出来ず失望感を残すわけであるが、長期で見ると評価が一変することを忘れてはならない。
長期で変化することは二つある。第一に長期では効果の面積が垂直三角形から長方形に変わり、時間かける効果がそのまま効くということである。第二に改善策の効果が時間とともに拡大することが期待出来る場合である。効果は累積的となり、絵に描いたような『継続は力なり』のケースになる。
日本企業では一銭一円の原価削減の積み上げが重視され、それが競争力を形成してきたことは事実である。多くの社員は、言われるまま、 半ば盲目的に原価改善に取り組んでいる。しかし、何故原価改善の継続が重要かを理論的に理解すれば、やりがいも一段と増すだろう。


重要なのは長期的に、累積的効果をもたらす収益改善である。